chapter 54~ chapter 54 “彼女の彼” ~ 彼女には好きな人がいた。彼も好きだと言ってくれるらしく関係もある。 でも相手は既婚である。要は不倫だ。 更に彼は携帯を持っていないらしく彼女からは連絡が取れない。 彼女は、彼からの連絡をひたすら待っていた。 仕事が終わると電話が来るらしく、仕事終了の時間が合えば途中の駅で待ち合わせして一緒に帰ってこれる。 たった数駅、同じ電車に乗るためだけに彼女は残業して連絡を待っていた様だった。 彼の気分次第でどうにでも転がってしまう予定なのに、それでも待っていたかったのだろうと思う。 「今日はかかってこなかった」と、どんよりしながら夜遅くに帰って来る事もあった。 実際会ってないので彼がどういう人で、本当はどういうつもりだかわからないけれど 彼女はうるさく自己主張をするような子じゃないし、家庭を保ちつつ遊ぶにはちょうどいいだろう。 でも、もしかしたら彼女を本当に心配しているのかもしれない・・・肯定的な見方をしてみた時もあった。 家庭を持ってはいるけれど、その人なりに精一杯彼女を心配しているのなら、 彼女には今、心から心配して彼女を想ってくれる人は必要だろうと思う。 けれどいつだったか「まだ友達の家に住むの?早く1人暮らしに戻れば」という様な事を 彼から言われたと彼女から聞いた時から肯定的には見れなくなった。 本当に心配しているのなら、いつまた自殺未遂をしてしまうかわからない、 不安定な気持ちを抱えた彼女にそんな事は言えないはずだ。 とても1人に出来る状態じゃない。その人は彼女を本当に解ってなんかいない。 何かあれば俺がいつでも飛んで行くと思っているんであれば彼女からも連絡が取れる様にするだろう。 既婚でそういう訳にいかないのだから、誰かの家に居る方が安心に決まってる。 今の彼女に1人暮らしを勧めるようではとても彼女を心から想っていると思えない。 1人暮らしならいつでも彼女の家に行けるし、自分の好きな時に会える。 そんな都合のいい相手と状況が欲しいだけなら、彼女から離れて欲しかった。 私は会った事もないけれどその男が嫌いだった。 そんないい加減な男、とっとと離れてしまった方がいいのに、と思ったけれど 誰かに依存していないといられない彼女の気持ちもわかる気がしていた。それもまた、自分に似ている。 1人で立てない状態の今、いきなりその人を切るのは出来ないだろうな・・・。 度々、彼の話を時に嬉しそうに、時に辛そうに話す彼女の話を黙って聞いているしかなかった。 そんな男でも、彼女が今、心の支えにしているのだったら仕方がない。 そんな男でも、誰も居ないよりはマシなのだった。 彼女は自分自身を100%相手にさらけ出して誰かと付き合う自信がない。 ・・・だから?だから、相手も100%でぶつかって来ない人を選んでしまう? 昔、私があえて彼女持ちを選んで寝ていた頃の様に・・・? ◆chapter 54について(日記) へ ◆chapter 55 へ |